Diversity & Inclusion / ダイバーシティ&インクルージョンを実現し「ひと」の成長と活躍を促進

「ひと」が介在することで生まれる価値や喜びを追求する企業として、労働環境の改善や多様性の確保、人材育成に注力します。

社会課題・世の中のニーズ

我が国では、少子高齢化による労働力不足に対応すべく、自動化・省力化技術の導入が外食業界にも拡がりつつあります。しかし、おいしい食事の源泉には「ひと」にしか成し得ない価値の提供があります。「ひと」が持つ多様性を尊重し、活躍の場を提供することは、企業の社会的責任であるとともに、当社グループが顧客ニーズの多様化を捉え、提供価値を適応させるための条件でもあるのです。

機会

  • 多様性の尊重を通じ、グローバルに優秀な人材を獲得
  • 自動化・省力化のメリットを享受しつつ、人材の価値を拡大
  • 教育投資により社員のモチベーションと採用競争力を向上

リスク

  • 就業人口の減少に伴う人材確保の困難
  • 顧客ニーズの多様化への対応の遅れによる商品開発・事業創出の停滞
  • 社員エンゲージメント・定着率の維持に要する多様性対応

短・中期的な施策

  • 女性社員比率の向上
  • 経営者候補開発に向けたビジネススクール派遣、中堅リーダー開発を目指す産学連携活動の推進などによる35歳以下幹部候補比率の向上
  • 高校とのパイプつくり、採用実績校との関係強化
  • 健康診断有所見者率80%未満
  • 生産性向上による総労働時間数削減
  • RPA推進
  • グループシナジーの向上
  • 福利厚生の拡充
  • 人材発掘「新長期フォーラム」運営
  • 人材強化のためのさまざまな研修実施:社内選抜研修「G4・G5層研修」、組織開発「リアルチーム研修」、キャスト定着向上「対話型研修」(エリアマネージャーと店長、キャストの関係性向上)、上司力向上「面談プログラム」(コーチングスキル習得と実践)

従業員との共創

コーチング研修と社内メンター制度

2020年度より毎年継続し、グループに所属する役員・上位職位者(エリアマネジャー以上)向けのコーチング研修として「上司力向上プログラム」を実施しています。このプログラムは、部下に対して業績評価面談を行い、人材を育成する立場の管理職が、評価・コーチングスキルおよびコミュニケーションスキルを高めるためのものです。受講者は、半年間にわたり集合およびリモート開催の形で研修を受け、最後にペーパーテストと実技の認定試験が行われます。
組織自体が自発的で、社員の活躍と成長を促進する企業風土の醸成が本プログラムの目的です。また吉野家では、この研修がもたらすエンパワーメントコミュニケーションのスキルを活かし、社員に対して他部署の管理職が上下関係のない立場で関わることで、職場で感じる負担感をケアする「社内メンター制度」を2022年度から開始しました。

  • コーチング研修による傾聴スキルの実践

米国における従業員ケアの重視

ヨシノヤアメリカは、従業員とって楽しい会社づくり、楽しみながら働ける職場環境づくりを重視し、企業風土として根付かせるべく努力しています。これは、優れた商品・サービスによるお客様への価値提供だけでなく、店舗で働く従業員の満足度を高める価値提供も、地域社会への貢献につながるという考え方に基づいています。
店舗運営の中心となるジェネラルマネジャー(店長)は、四半期に一度本社オフィスに招かれ、営業成績の表彰とともに会社からの感謝を伝えられます。また経営陣は、普段から現場を訪問する機会を設け、従業員の声を直接聞き、それを職場環境の改善に反映しています。
そうした改善の一つとして現在、給与システムのアップデートを進めており、2023年度中には給与の日払いが可能になる「デイリーペイシステム」を導入する予定です。

  • ヨシノヤアメリカの従業員

業務のクオリティを競う社内大会を開催

吉野家とはなまるは、店舗で働く従業員のオペレーションスキルやサービス品質を競い合う社内コンテスト・コンクールを恒例イベントとして毎年開催しています。
吉野家では、「チームサービスコンクール」「肉盛り実技グランドチャンピオン大会」「バックルームチャンピオン大会」などが行われており、全国から予選を勝ち進んだチームや個人が決勝戦に出場。磨き抜いたハイレベルの技術を披露し、勝者が決まります。はなまるでも同様に「オペレーションコンテスト」が行われ、決勝戦で店長部門・スタッフ部門それぞれの最優秀者が決まります。
こうした社内大会を通じて、店内のチームワークを強め、社内コミュニケーションの活性化を図り、楽しく明るい職場環境を実現するとともに、お客様への提供価値である商品・サービスのクオリティアップにつなげています。

  • 吉野家肉盛り実技
    グランドチャンピオン大会

ダイバーシティ&インクルージョンを実践するための5つの指針

ダイバーシティ&インクルージョンを実践するための5つの指針を定め、「一人ひとりの個を活かす」という考えのもと、互いに信頼関係を育みつつ誰もが持てる力を発揮し、いきいきと活躍できる状態を作ります。多様な「個」から知の多様性を生み出しかけ合わせることにより、変化への対応力=レジリエンスを高め、新たな価値=イノベーションを創出することで、お客様と社会の課題を解決し続けます。

ダイバーシティ&インクルージョンを実践するための5つの指針

1. 個の理解と尊重
吉野家ホールディングスグループは、一人ひとりの違いを知り、認め、相互に尊重します。
アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を正しく理解し、コミュニケーションの質と量を高めることで、互いの考え方や価値観、背景を理解しあい、その違いを活かして相乗効果を発揮します。

2. 全員の活躍を推進
吉野家ホールディングスグループが目指すのは、全員の活躍です。
年齢・性別・人種・国籍・地域・学歴・信条・宗教・障がいの有無・性的指向・性自認・健康状態などの属性に関係なく、一人ひとりの可能性を拡げ、能力を発揮できる状態を目指します。そのために、経験や能力に応じた適材適所の実現に努めます。

3. 公平なサポートの実践
吉野家ホールディングスグループは、一人ひとりを尊重し、多様な生き方を理解した上で公平なサポートを行います。
様々な事情や制約が生じたときにも活躍し続けるために、働きやすい環境を整え、成果や貢献に応じた公平な評価に努めます。

4. 信頼関係の構築
吉野家ホールディングスグループは、互いに信頼し合うことを大切にしています。
利他の精神を持ち、人の繋がりを大切にすることを通じて一人ひとりと互いに信頼関係を築きます。

5. 主体性と挑戦の重視
吉野家ホールディングスグループは、従業員と組織が一緒に成長することを目指します。
一人ひとりが自分の生き方と働き方を考え、自律的に行動するプロフェッショナルとして成長できるよう様々な機会を提供します。そして、主体性や挑戦する姿勢を、成長に不可欠なマインドとして大切にします。

戦略人事の新たな動き

次期経営チームの発掘・育成及び意図的な配置転換の一環として、2021年度よりHR(ヒューマンリソース)会議を立ち上げ、若手社員の積極登用を進めています。事業会社および各部門において、幹部候補となる人材を推挙し、意図的配置転換を行うなど具体的な取り組みが始まりました。本社部門の要員を店舗から公募する施策も開始し、その中から選抜した人材をシステム担当や商品開発担当などに配属しました。

人材教育への投資状況

当社グループは、従業員が自ら成長を望み多くのチャレンジが可能な機会の提供と、人材教育への積極投資を継続しています。2021年度の戦略人事では、プロファイリング、面談プログラム、リアルチーム研修、社外交流研修、産学連携プログラムを主な教育投資の対象として実行しました。

また、必要とあらば計画外であっても追加の教育機会提供を実施するなど、柔軟な対応をもって取り組んでいます。

ダイバーシティ&インクルージョン

当社グループでは、2016年4月の女性活躍推進法施行を受け、同年より「202530」をスローガンに掲げ、2025年までに女性正社員比率30%、女性管理職比率30%の達成を目指しています。また吉野家では2021年度に人事制度を改定し、女性正社員比率を30%以上、35歳以下の幹部候補(管理職)比率を30%以上とするクオータ制を導入しました。

これらにより当社グループにおける女性活躍推進の2021年度実績は、女性正社員比率30.9%、女性管理職比率25.0%となっています。育児休暇制度や時短制度、産休からの復帰時におけるケア(職位維持、時間外労働や深夜勤務の免除など)を通じて、多様な働き方を認め、女性が働きやすい職場環境の整備を進めています。吉野家のC&C(クッキング&コンフォート)店舗など、多様な客層を取り込んでいく事業展開では、特に女性が持つ適性が発揮されており、今後のグループ事業には、女性の活躍がますます不可欠となります。

クオータ制のもう一つの目標である若手人材の幹部登用は、社員の高齢化が進む中で、世代交代に向けた早急な対応として推進しています。吉野家の35歳以下の幹部候補比率は、2021年度実績で2.3%にとどまっており、正社員採用における25歳以下の人材獲得に注力しつつ、35歳までにエリアマネージャーに育てる戦略的研修を実施していくことで、取り組みを加速します。

一方で当社グループは、障がい者雇用や定年後社員の再雇用にも積極的に取り組んでいます。グループ内で「フレンド社員」と呼ぶ、障がいを持つ人材の雇用については、2015年に雇用促進委員会を立ち上げ、国内各事業会社で雇用を管理しています。2021年度の国内における障がい者雇用率は4.98%となっており、法定雇用率の2.3%を超える水準を維持しています。フレンド社員の多くは、工場で清掃などに従事しているほか、特例子会社として制服のクリーニングなどを担う株式会社三幸舎ランドリーセンターでも活躍しています。今後は、店舗現場での雇用モデルづくりや、雇用体制の最適化に向けた取り組みをグループ全体で共有し、展開していきます。

60歳以上のシニア人材の活躍を促進する定年後社員の再雇用は、国内各事業会社において高年齢者雇用安定法に基づく取り組みを行っています。同法は2021年4月に改正され、70歳までの就業確保措置が努力義務となっています。当社グループは、2021年度実績として65歳以上の社会保険適用従業員を328名雇用しています。

グローバル人材の獲得と育成

外食ビジネスをグローバルに展開する当社グループにとって優秀な外国籍人材の獲得は、多様な価値観に対応した食の提供を拡大していくための重要なテーマです。国内では2021年度実績として、外国籍のキャストを1,856名、外国籍の正社員を51名雇用しています。

日本への留学生に向けた採用アプローチとして、大学とタイアップし、外食産業への認知度を高めるための授業を実施しています。また、農林水産省プロジェクトへの協賛や経済産業省の協力事業を通じ、東南アジア各国における大学での寄附講座開設、訪日インターンシップ、奨学金支給などを行い、企業イメージ向上とブランディングを図りつつ、現地での採用活動を行っています。

入社後の育成面では、長期就労ビザの発給条件として、5年以内にエリアマネージャー(管理職)に昇格する必要があるため、現場での教育を急ピッチで進めていますが、壁は高い状況です。しかし、当社グループのサービスクオリティや安全・安心な食の提供に強い関心を持ち、それを母国に持ち帰って外食ビジネスを経営したいという意志を持った人材が多く、日本人以上のバイタリティと優秀さを発揮しています。

ライフワークバランスの充実に向けた制度

従業員の多様な働き方を企業としてサポートし、仕事以外の生活についても充実を促すべく、当社グループではさまざまな制度を設けています。

吉野家では、2019年から「ボランティア特別有給休暇制度」を導入し、店舗で働くキャストに対して、通常の有給休暇とは別に、ボランティア 活動に参加する際に取得できる有給休暇を1日付与しています。休暇の対象となる活動は、児童福祉施設や高齢者施設・高齢者世帯への支援、被災地への支援、防災活動、障がい者向けイベントのサポート、地域のスポーツ大会の手伝いなどです。

また、大学入学予定の高校生キャストを対象に、入学料・授業料の学資を貸与する「奨学金制度」を2017年より実施しています。本制度は、大学卒業から最大20年間での学資返済を想定していますが、吉野家に入社して4年間継続勤務すると全額返済免除となり、他社に入社した場合も外食企業であれば半額返済免除とするものです。人材の獲得のみならず、経済支援によってライフワークバランスの向上を図り、外食産業全体の利益にもつなげる取り組みとして評価されています。

オペレーション負荷を軽減する店舗設備

当社グループは近年、食器洗浄の自動化に取り組み、設備の開発と実験導入による検証を進めてきましたが2022年2月に「全自動食器洗浄ライン」として、C&C店舗へリニューアルした吉野家足立保木間店に初めて本格導入しました。

本洗浄ラインは、当社店舗向けに機能をカスタマイズした小型コンベア洗浄機と、独自に開発した食器ピッキングロボットで構成され、毎時500個・約100人分の食器を洗浄し、食器の種類ごとに重ね置くまでの作業を自動化します。これまでの開発・検証を通じて、扱える食器の種類を増やしながら、作業精度の向上と処理スピードの高速化を図ってきました。足立保木間店では、食器返却口での分別をお客様にお手伝いいただくスタイルで、洗浄前のプロセスも省人化しています。

今後は、洗浄機とロボットをL字型に配置する省スペース化や、両者を一体にしたコンパクトタイプの開発によって導入店舗を拡大します。店舗で働く従業員の作業負担を軽減し、その分を従業員にとってより付加価値が高い業務に振り分け、お客様へのサービス向上にもつながるよう、引き続き取り組みを進めていきます。

  • ロボット洗浄機
  • 食器返却口

ウェルネス経営の推進

社員の心と体の健康を経営の柱の一つに位置付ける「ウェルネス経営」を2015年に宣言し、健康増進への取り組みをホールディングスから 開始しました。

  • 3回目の職域接種の様子

コロナの感染が拡大する以前は、スマートフォンアプリを使った食事指導・生活習慣指導を実施し、健康リテラシーの向上を図っていました。コロナ収束以降このような活動を再開したいと考えております。2022年度以降、こうした取り組みをグループ全体に拡げていきたいと考えています。

なお2021年度は、国内グループ会社の社員・キャストと取引先様を合わせた約7,000名を対象に、新型コロナワクチンの職域接種(1・2回目)を実施しました。2022年度は、足もとで拡大しているオミクロン株に対応した3回目の職域接種を実施しました。

キャストから正社員への転換・キャリアアップ

労働力不足が深刻化する中、当社グループでは店舗で働くキャストから正社員への転換を重要な採用チャネルの一つと位置付け、積極的に推進しています。

吉野家では、キャストが段階的にスキルを身につけるためのランクアップ・システムをもとに、店長がキャスト一人ひとりの教育計画を策定します。キャストのランクは、パートナーからストアリーダーまで9段階あり、自己評価と店長からの評価によって昇格が決定します。

そして、ランク要件を満たした優秀なキャストを正社員として雇用する転換試験を毎月実施し、キャリアアップの機会を設けています。