人的資本経営

基本方針

「人的資本経営」とは、企業が持つ人材や知識、スキルなどの「人的資本」を経営資源として活用し、企業価値を高めるための経営手法です。当社グループは、サステナビリティ基本方針にもとづき特定した「5つのマテリアリティ」において、「ダイバーシティ&インクルージョンを実現し『ひと』の成長と活躍を促進する」ことを掲げています。経営理念に「For the People」を掲げ、日常食を提供する当社グループにとって、従業員が仕事を通じて感じる喜びややりがいは、お客様のおいしく豊かな食事を支えるサービスの源泉であり、「ひと」にしか成し得ない価値があります。「ひと」の多様性や個性を尊重し従業員の活躍と成長を促すことは、拡がり変わりゆく顧客ニーズを捉えた価値を生み出し続けることにつながり、企業としての持続的成長と社会への価値還元をもたらしていきます。

また、「人的資本経営」に関する情報の開示は、企業の透明性を高め、ステークホルダーとの信頼関係の構築につながります。当社グループは、従業員、お客様、投資家、ビジネスパートナーおよび地域社会など、全てのステークホルダーに対して、「人的資本」について開示することで、企業価値の向上につなげていくことを目指します。

人材育成方針

当社グループでは、全ての社員を幹部候補とみなし、公平な教育機会を提供しています。成長のための挑戦機会の提供や専門教育、配置転換を行い、成長と学びに必要な投資と環境整備を行います。

社内環境整備方針

当社グループでは、全ての従業員が心身ともに健康で、安全な環境で働くことができるように、ダイバーシティ&インクルージョンの実践、ライフワークバランスの推進、ウェルネス経営の推進に努めています。

人的資本価値の最大化に向けた取組み

(1)ダイバーシティ&インクルージョンの実践

「ひと」の多様性や個性を尊重し、「一人ひとりの個を活かす」という考えのもと、すべての従業員が互いに信頼関係を育みつつ持てる力を発揮し、いきいきと活躍できる会社を目指します。「個」から生まれる知の多様性をかけ合わせることで、変化への対応力=レジリエンスを高め、新たな価値=イノベーションを創出し、お客様と社会の課題を解決し続けます。

【ダイバーシティ&インクルージョンの実践に向けた5つの指針】

1.個の理解と尊重 吉野家ホールディングスグループは、一人ひとりの違いを知り、認め、相互に尊重します。
アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を正しく理解し、コミュニケーションの質と量を高めることで、互いの考え方や価値観、背景を理解しあい、その違いを活かして相乗効果を発揮します。
2.全員の活躍を推進 吉野家ホールディングスグループが目指すのは、全員の活躍です。
年齢・性別・人種・国籍・地域・学歴・信条・宗教・障がいの有無・性的指向・性自認・健康状態などの属性に関係なく、一人ひとりの可能性を拡げ、能力を発揮できる状態を目指します。そのために、経験や能力に応じた適材適所の実現に努めます。
3.公平なサポートの実践 吉野家ホールディングスグループは、一人ひとりを尊重し、多様な生き方を理解した上で公平なサポートを行います。
様々な事情や制約が生じたときにも活躍し続けるために、働きやすい環境を整え、成果や貢献に応じた公平な評価に努めます。
4.信頼関係の構築 吉野家ホールディングスグループは、互いに信頼し合うことを大切にしています。
利他の精神を持ち、人の繋がりを大切にすることを通じて一人ひとりと互いに信頼関係を築きます。
5.主体性と挑戦の重視 吉野家ホールディングスグループは、従業員と組織が一緒に成長することを目指します。
一人ひとりが自分の生き方と働き方を考え、自律的に行動するプロフェッショナルとして成長できるよう様々な機会を提供します。そして、主体性や挑戦する姿勢を、成長に不可欠なマインドとして大切にします。

【ダイバーシティ&インクルージョンを実践するための取組み】

当社グループは、持続的成長に向け、女性やファミリーをはじめ多様な客層の利用促進を図る事業展開を行っており、そのために社内の意思決定に携わる女性社員の数を増やす取組みを進めています。その一環として「35歳以下の幹部候補(管理職)比率30%」以上を2025年までに達成すべくクオータ制を導入し、年度毎に必達数値を設けています。育児休暇制度や時短制度、産休からの復帰時におけるケア(職位維持、時間外労働や深夜勤務の免除など)を通じて、多様な働き方をサポートし、すべての従業員にとって働きやすい職場環境を整備しています。

また、 当社グループは、障がいを持つ人材の雇用や定年後社員の再雇用にも積極的に取り組んでいます。グループ内で「フレンド社員」と呼ぶ、障がいを持つ人材の雇用については、2015年に「雇用促進委員会」を立ち上げ、国内の各事業会社で雇用を管理しています。フレンド社員の多くは、工場で清掃などに従事している他、特例子会社として店舗従業員のユニフォームのクリーニングなどを担う株式会社三幸舎ランドリーセンターでも活躍しています。60歳以上のシニア人材の活躍を促進する定年後社員の再雇用について 、国内の各事業会社において高年齢者雇用安定法にもとづく取組みを行っています。

吉野家ホールディングス・吉野家・はなまるでは、職務等級制度により性別・国籍・年齢を問わず職務等級に応じた給与を設定しています。同一職務等級内での男女賃金差が生じているのは、等級に属する男女の社員数や平均勤続年数の違いによるものであり、女性活躍やクオータ制の推進により是正される見込みです。

職務等級が昇級すると、性別・国籍・年齢を問わず各職務に応じた給与額が設定されます。

ダイバーシティ&インクルージョンの実践 定量情報

指標 2023年2月期実績
育児休暇取得率※2 男性33.3%
女性100.0%
産後休暇復職後の時短勤務制度利用者※2 2名
フレンド社員(障がい者)雇用率※3 5.06%
※法定雇用率2.30%
65歳以上の社会保険適用従業員雇用数※2 292名
男女平均賃金の格差※2
(男性賃金を100とした場合の女性賃金の割合)
平均勤続年数※2
部門長 85.1%
男性25.0年 女性21.9年
管理職(エリアマネジャーなど) 94.3%
男性20.2年 女性15.9年
非管理職(店長など) 92.9%
男性12.9年 女性8.2年

(2)ライフワークバランスの推進

仕事以外の生活の充実を促す休暇制度、従業員同士のつながりや関係性を良好にするためのコミュニケーション施策を導入、実施するとともに、社員の心と体の健康を経営の柱の一つに位置付ける「ウェルネス経営」を推進しています。

【組織風土の活性化】

吉野家ホールディングス・吉野家では2年に一度、はなまるでは定期的に、組織風土診断を実施しています。組織風土診断は企業の健康診断であり、従業員のモチベーション、組織内の意思疎通や風通しなどの健康状態を可視化することで組織風土の活性化に向けた課題を表出しています。2022年度には、社内のコミュニケーションの更なる活性化を図るために「企業風土向上委員会」を設立し、活動を開始しました。

【働きやすさ】

吉野家は、チェーン展開の開始当初から労働基準法第39条を遵守し、パート・アルバイト従業員への有給休暇制度を導入しています。大学入学予定の高校生アルバイト従業員には、入学料・授業料の学資を貸与する「奨学金制度」を導入しています。この奨学金は、卒業後に当社グループに入社し4年間在籍された場合は全額返済免除となり、他の外食企業に入社された場合も半額免除としています。また、社員には「永年勤続表彰」として、勤続10年・20年・30年・40年にそれぞれ特別休暇を付与しています。

【社内コミュニケーション】

吉野家・はなまるでは、店長以上の社員を集めた店長集会(社員総会)を年に2回開催しています。感染症が拡大した2020年以降もオンラインで開催を継続し、社員がトップのメッセージを直接聞く機会を設けています。

吉野家は、社内報で定期的に社長と店長数名が参加する座談会を実施し、経営理念や営業政策、仕事のやりがい、店舗運営の困りごとなど毎回テーマを変えながら、社長と直接語り合える場として活用しています。また、夏休み企画として、小学生までのお子さんがいる店長を対象に職場体験を開催し、お父さん・お母さんと一緒に店舗で働くことで、仕事への理解や家族間コミュニケーションの促進を図っています。

【ウェルネス経営】

社員と一定条件を満たしたパート・アルバイト従業員を定期健康診断の対象者とし、心と体の健康管理を行っています。今後は、スマートフォンアプリを活用した食事指導・生活習慣指導を実施し、健康リテラシーの向上を図ります。

ライフワークバランスの推進 定量情報

指標 2023年2月期実績
有給休暇取得率※2 社員 59.3%
パート・アルバイト 76.5%
奨学金制度利用者数 (延べ人数)※4 23名
定期健康診断受診率 (パート・アルバイト従業員含む)※2 89.1%
ストレスチェック受検率※5 58.5%
ストレスチェックでの高ストレス者割合※5 20.2%
社員離職率(入社3年以内)※2 43.6%

(3)人材育成・キャリア支援

従業員一人ひとりの十分な能力発揮と、長期的な成長促進に主眼を置き、人材育成・キャリア支援への積極投資による「ひと」づくりを継続しています。

【人材育成】

社員には、各自のステージに合わせた教育研修や教育ツールを用意し、キャリアパスの実現を支援している他、専門知識・技術の習得に向けた「自己啓発援助制度」を導入しています。事業会社および各部門においては、幹部候補となる人材を推挙し、意図的に配置転換を行っています。店長を含む全社員を対象に本社部門の要員公募も行っており、その中から選抜した人材をシステム担当や商品開発担当に配属し成長機会を提供しています。また、適材適所の配置実現に向けた人事情報をデータベース化し、グループ内人材交流の活性化や次世代リーダーの育成につなげています。

研修概要(一例)

研修名 対象 研修の狙い
コンプライアンス研修 グループ全役員・全社員 コンプライアンスの理解と浸透
面談プログラム 役員・部門長 コーチングスキルの習得と実践
理念浸透ワークショップ 店舗経験のない本部社員 経営理念の理解とチームビルディング
ビジネススキル習得研修 エリアマネジャー・上級店長 マネジメントスキルの習得
経営塾 管理職選抜者 経営戦略とプレゼンテーション
海外視察研修 経営塾修了者 海外市場の調査と今後の国内・海外展開への提案
対話型リアルチーム研修 エリアマネジャー・店長 組織力開発
安全管理・品質衛生研修 工場従業員 知識・技術の向上

外部機関への派遣・交流(一例)

プログラム名 対象者 プログラムの狙い
ビジネススクール 役員・部門長 ビジネススクールやロースクールなど専門知識の習得
異業種交流会 管理職選抜者 社外人材との切磋琢磨と人脈作り
産学連携プログラム 管理職選抜 学生との協業によるリーダーシップや育成力などの対人スキルの向上

【調理・接客技術の研鑽】

吉野家の店舗では、オンラインによる動画教育ツールを整備しています。調理や作業の工程を繰り返し確認できるだけでなく、外国籍のパート・アルバイト従業員に対するオペレーションの理解促進にもつながります。オペレーション技術については、店舗勤務の従業員を対象とする競技大会を開催し、研鑽・向上を図っています。吉野家では、牛丼の肉鍋管理・盛付技術を競う「肉盛り実技グランドチャンピオン大会」、接客技術を競う「チームサービスコンクール」、メニューの多様化に対応する実践的オペレーションを競う「キッチンマスターチャンピオン大会」を開催しています。また、はなまるでも、盛付と接客の総合的なスキルを競う「オペレーションコンテスト」を毎年開催しています。

【グローバル人材の教育・育成】

外食ビジネスをグローバルに展開する当社グループにとって、優秀な外国籍人材の獲得は、多様な価値観に対応した食の提供を拡大するための重要なテーマです。外国籍社員を短期間の労働力とは見なさず、日本国籍社員と同様に店長職を通じて将来の経営幹部候補に必要なスキルを身に付けるという方針のもと、国内で教育・育成を進めています。また、国内の店長を対象に定期的に海外に語学留学を派遣するなど、グローバル人材の母集団形成を行っています。

【次世代経営層の発掘・育成】

2021年度よりホールディングスの執行役員以上をメンバーとする「HR(ヒューマンリソース)会議」を立ち上げ、次世代経営層の発掘・育成に向けて、幹部候補となる人材の推挙や意図的配置転換、若手社員の積極登用といった動きを進めています。次期経営幹部の候補として管理職から選抜した人材に対しては、社内の「面談プログラム」や「対話型リアルチーム研修」と並行し、社会に視野を拡げて経営幹部に求められる知見や人脈を獲得すべく、異業種交流研修や産学連携プログラムへの参画、ビジネススクールへの派遣などの機会を設けています。

【キャリア支援】

店舗で働くパート・アルバイト従業員から社員への転換を積極的に推進しています。社員として活躍する意思のあるパート・アルバイト従業員に対し、雇用の転換試験を毎月実施し、キャリアアップの機会を常に設けています。社員への転換後は、将来の経営幹部候補となるべく、店長業務と定型研修を通じてビジネスパーソンに必要なスキルを身に付けることができます。

人材育成・キャリア支援 定量情報

指標 2023年2月期実績
従業員数(パート・アルバイト従業員数含む)※1 合計15,429名
男性7,637名 女性7,792名
外国籍従業員数※2 社員53名
パート・アルバイト1,666名
働く従業員の国籍数※2 世界31カ国
社員のパート・アルバイト経験者割合※2 79.9%
重要ポジション(役員・部門長)のパート・アルバイト経験者割合※2 45.6%
35歳以下管理職比率※2 4.0%
社員一人あたり教育研修時間※2 28.7時間/年
社員一人あたり教育投資額※2 51,697円/年
教育研修実施回数※2 (役員・部門長研修) 20回
(選抜研修・社外研修) 30回
(店長研修) 144回

1 グループ連結(海外含む)実績

2 吉野家ホールディングス・吉野家・はなまるの3社実績

3 吉野家ホールディングス・吉野家・はなまる・三幸舎ランドリーセンターの4社実績

4 吉野家実績

5 吉野家ホールディングス・吉野家の2社実績