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Vol.3 吉野家ホールディングスが目指す姿 Interview 株式会社吉野家ホールディングス 代表取締役社長 安部修仁

2011年10月14日

新たに経営戦略を打ち出した吉野家ホールディングス。将来ビジョンの背景や、グループが目指す姿について、代表取締役社長安部修仁が語ります。

  • 経営戦略について
  • 国内事業の取り組み
  • 海外展開における取り組み
  • 不可能領域への挑戦

経営戦略について

今回発表された経営戦略の目標について教えて下さい。

従来の延長線上では到達できない高い目標値を設定

今回の経営戦略では、2015年度末までに達成する目標数値として、「国内外店舗数合計4,500店舗・チェーン売上高3,300億円・連結売上高2,500億円・連結営業利益200億円・連結営業利益率8%・営業利益における海外比率25%・ROE(自己資本利益率)10%以上」を掲げました。吉野家ホールディングスグループが中期的に目指す姿を数値化したものです。

当社グループのこれまでの経営戦略では、従来の延長線上で考え、グループ各社の出店計画をベースとして最終的な目標数値を作成していました。しかし今回は、当社グループの持つコンテンツそのものを改革し、ブランド価値を改めて創造しなおすというスタンスに立ち、従来の延長線上ではとうてい到達できない、新しい目標を設定しました。
今まで短いスパンでは取り組めなかった課題や、問題意識を持ちながら先送りしていた課題について、約5年がかりで挑戦し、最終的にこの目標を達成していく考えです。

このタイミングで経営戦略を打ち出した理由についてお聞かせ下さい。

あらゆるものを見直し、再構築する時期

一言でいえば、「潮目が変わった」ということです。当社はこれまで、1980年の倒産後に構築したビジネスモデルの延長線上を歩いてきました。例えば吉野家の店舗については、「1店舗あたりの年間売上高1億円、営業利益1000万円、総投資額5000万円、ROI(投資収益率)は年間20%」をビジネスモデルの基軸にしてきました。しかし、市場環境が全く変わってしまった以上、これまでの考え方を大きく転換し、新しいビジネスモデルをつくらなければなりません。
日本国内市場においては、少子・高齢化で人口は減少傾向にあることが予測されています。外食産業の対象人口はさらに速いペースで減少するでしょう。消費者のニーズも変化し、マーケットの様相が大きく変わっていることが感じられます。マーケットは常に変化するものではありますが、過去から未来への長い連続性から見ても、この数年を転換点にして、完全に「潮目が変わった」という認識です。
そうした環境変化のなかで、グループの各事業のあり方をいったんリセットして、客観的に見直す必要があると考えました。そして、どのような環境のなかでも持続的成長を実現できる、新しい吉野家ホールディングスグループを構築するために、将来の「目指す姿」である経営戦略を打ち出したわけです。

国内事業の取り組み

中核事業である国内吉野家については、どのような成長イメージを描いていますでしょうか。

準備、助走ステップを経て大きな成長を構想

「目指す姿」の目標数値の5カ年を「準備期間」「助走期間」「疾走期間」の3段階に分けて成長軌道を作るつもりです。準備期間で新しい商品価値、サービス価値の創造に取り組みます。それらが完成する2013年頃をブレイクスルーポイントとして、既存店の改装や出店のための開発を推進するとともにブランディングに注力。そして、3段階目の疾走期間で急速出店による成長を実現します。この吉野家のプレゼンス(存在感)曲線に少し遅れて、成長曲線が上昇していき、2015年以降には圧倒的ブランドとしての地位を確保したいと考えています。

準備期間では、これまで以上においしく、そして「やすい」商品と、何を食べても満足感が得られる商品構成をつくりながら、それに合わせた店舗モデルも構築します。例えば、女性やファミリーやグループに対してはヘルシーメニューや居心地の良さを提供し、ビジネスマンや若年男性には、吉野家の原点であり代名詞ともいえる「はやさ」を最優先に提供する。というような、異なる期待欲求に適応する店舗モデルも構想しています。

充実

国内の他の事業についてはどのようにお考えでしょうか。

各社の強みを生かし、成長に向けた「充実」を図る

「はなまる」「京樽」「どん」などあらゆる事業で、それぞれの強みをさらに伸ばすため、まず足下の「充実」を図っていきます。商品・サービスの価値を高め、競争するための自力を付けることが第一段階の条件です。その次の段階として、成長プランに入っていきます。

また、グループ全体でこれらの成長戦略を支えるために、強靱な企業体質の構築も同時に行っていきます。2011年6月に吉野家ホールディングス内に設立した、グループ商品本部とグループ開発本部はその取り組みの一環です。両本部は、ここ数年続けてきた商品・物流委員会を組織化したものです。グループでの食材調達や物流、物件開発や店舗の建設管理や資機材調達などの機能を一元化し、組織も集約・最適化することで、コスト低減や業務効率向上を実現していきます。

海外展開における取り組み

成長

経営戦略のなかで海外展開についてはどのようにお考えでしょうか。

海外を成長ドライバーとして、中国を中心に経営資源を投入

海外事業はグループの成長ドライバーと位置づけ、大幅な成長を期待しています。特に中国は、1970年代の日本のような、外食市場の黎明期ともいえる状況にあり、市場全体が直線的に成長している途上にあります。吉野家を中心にグループ各社が出店を拡大し、そのチャンスをとらえていきます。例えば吉野家では、これまで北京や上海、深センなどで店舗を増やしてきましたが、この数年で業績もマネジメントの質も大きく向上しました。急成長への基盤ができたということです。その基盤を最大限に生かして、既存地域でのさらなる出店拡大と、未展開地域への進出を図ります。

一方、初出店からの歴史が長い米国は、今後、従来とは全く異なる思い切った戦略を実行して、店舗数を一気に増加させなければならないと考えています。
グループ各社の海外での経営戦略を精査したうえで、どのようにヒト・モノ・カネを配分するか決定するのが吉野家ホールディングスの役割です。エリア別の経営資源の配分については、中国に7割程度、米国とアジア各国で残りの3割というシェアイメージです。
当社グループはこうした取り組みを通して、日本初の「食」のグローバルブランドとしての地位を確立していきたいと考えています。

不可能領域への挑戦

今回の目標設定にはどのような思いが込められているのでしょうか。

高い目標を共有することで強い決意が生まれる

これまでは、未来への出店計画を軸に定量的な計画策定を行ってきましたが、それは現状の延長線上での計画スタンスでした。今回は、国内は中身を充実・向上させ新しい次元にステージアップさせることが重点ポイントで、新しく創られる事業価値・ブランド価値の下で改めて急速成長を図る、という面で大きく設定スタンスを切り換えました。
一方、中国への取り組みは、既存店舗の充実と実績を背景に、ドッグイヤーの時間観念で成長計画とエネルギーの傾斜配分を行います。こちらも、これまでとは大きくスタンスが異なります。

不可能領域への挑戦

これまでとはスタンスを変えて、あえて高い次元の目標を設定し、共有することで、強い決意が生まれます。そして、目標に至る具体的なロードマップを描くことで、難しいことにも果敢に挑戦し、試行錯誤しながらも必ずクリアしていこうという意欲やワクワク感が社内に醸成されます。そのことがさまざまな活動を活性化させ、成果につながると考えています。「不可能領域への挑戦」にはそのような希望も込められています。
実現が困難と思われるような「不可能領域」でも必ず達成できるという強い信念と期待感を持って、吉野家ホールディングスグループの全員が心を一つにして挑戦していきます。

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